Corso di Natale とマリアージュ
@イル ボッカローネ / 東京・恵比寿
業務委託を請負っている東京・恵比寿の老舗イタリアン「トラットリア イル ボッカローネ」で始まった今年のCorso di Natale (クリスマス コース)
ソムリエ的な視点からマリアージュを提案してみました。
~ Antipasti / 前菜 ~
◆ 天使のエビとアーティチョークのカルパッチョ カラスミ添え
Carpaccio di Gamberi e Carciofi
フレッシュな天使のエビをカルパッチョに、ルッコラとカルチョーフィ(アーティチョーク)そしてカラスミをあしらった冷製の前菜
コースのスターターとして、さっぱりとして、胃袋に丁度良い運動となります。
合わせたのは、ミネラルたっぷりのサルディニア産 白ワイン
ヴェルメンティーノ ディ サルディーニャ “キメラ” / テヌータ ソレッタ / サルディニア州
過去のブログでも紹介しましたが、同じサルディニア島名産のカラスミと、白ブドウヴェルメンティーノの相性は抜群。
ワインのミネラル質がエビやカラスミの磯の香りと非常に良くマッチし、全体にさっぱりとして食欲が増してきます。
◆ 塩タラとポレンタのスフォルマート 黒トリュフの香り
Sformatino Baccala Mantecato e Polenta con Tartufo Nero
もともと長期保存のために塩漬けにして干した鱈を使ったヴェネツィアの郷土料理「バッカラ マンテカート」。
「バッカラ」とは「干し鱈」、「マンテカート」は「よく練る、こねる」という意味。
伝統的に水で戻した干し鱈を、牛乳やアンチョビ、玉葱などでじっくり煮込み、「ポレンタ」と一緒に蒸し焼きにしました。
「ポレンタ」とはトウモロコシのピューレで、「スフォルマート」が野菜で作るフランを意味します。
見た目もケーキのように可愛らしい一皿です。
ピューレ状にした干し鱈はとてもミルキーで滑らか。アンチョビの程よい塩気と、トウモロコシの甘味が非常に良く合います。
ここでは、料理の味わいの余韻の長さと、ほんのりと香るトリュフを考慮して、優しく樽を利かせた白ブドウ ヴェルディッキオから造る
カステッリ ディ イエージ ヴェルディッキオ リゼルヴァ クラッシコ “タルディーヴォ マ ノン タルド” / サンタ バルバラ / マルケ州
を合わせてみました。
アタック(口に含んだ時の第一印象)は、口当たりが優しく、甘味を感じ、その後にドライな味わいが追いかけてきます。
樽で熟成していますが、樽感はほとんど感じることなく、果実味に厚みをもたらす役目を果たしています。
~ Primi / パスタ ~
◆フォンティーナチーズを詰めたカラメッレ 白トリュフソース
Cramelle Ripieni di Fonduta al Tartufo Bianco
あえて画像を大きくしてみましたが、ご覧の通り、キャンディーの形をした可愛らしいパスタです。
わざわざ赤と緑のラインを入れて、イタリア国旗をイメージした手の込みよう!
このキャンディーの中に芳ばしいナッツの香りのするチーズが入っています。
白トリュフの官能的な香りが、魅力の一皿。
ここは、パスタやチーズよりも白トリュフの香りを大切にしたいと考えて、白トリュフの名産地ピエモンテ州の偉大な赤ワイン、
バローロ ソラーノ / クラウディオ アラーリオ / ピエモンテ州
をマリアージュさせました。
料理の地方性を考えても、
フォンティーナチーズ・・・ヴァッレ ダオスタ州
カラメッレ パスタ・・・エミーリア ロマーニャ州
白トリュフ・・・ピエモンテ州
と、統一性はないものの、そこは日本人シェフの創作力で美味しいとこ取りをしたようですので、香りにインパクトのある白トリュフと、繊細でエレガントな味わいが特徴のクラウディオ アラーリオの造るバローロを合わせました。
フォンティーナチーズのナッツのニュアンスも、このバローロが包み込んでくれます。
上質なフランスのブルゴーニュワイン=ピノ ノワールに勝るとも劣らない透明感とダイナミックさを併せ持つバローロを是非楽しんでいただきたいものです。
◆ アマローネのリゾット
Risotto all’Amarone
イタリア、ヴェネト州 ヴェネツィアの伝統料理「アマローネのリゾット」
イタリア米で作った見た目シンプルなワインレッドのリゾットです。
アルコールはもちろん飛んでいますが、リゾットを口に含むと、鼻から抜ける甘美な赤ワインの風味がワイン好きには嬉しい一皿です。
そうなると、合わせるワインも・・・
やはり、同郷の銘醸ワイン「アマローネ」ですね。
アマローネ デッラ ヴァルポリチェッラ クラッシコ / カンティーナ ヴァルポリチェッラ ネグラール / ヴェネト州
「アマローネ=苦み」という名の通り、陰干ししたブドウを発酵させる伝統製法によって生み出されるワインは、 妖艶な香りに加えビロードのような滑らかな舌触りとヴォリューム、そしてチョコレートを思わせる苦みが渾然一体となった、唯一無二の味わいが特徴です。
粘性の高いワインとリゾットの食感、同じワインなので、合わないわけがありません。
コース料理の一皿ではありますが、“ワインのつまみ”のような感覚で、アマローネが進みます!
~ Secondi / メインディッシュ ~
◆ 牛フィレ肉、鹿ロース肉、自家製サルシッチャの炭火焼き ラディッキオ タルディーボのソテー
Misto di Carne con Radicchio Tardivo
メインディッシュは、ボッカローネの看板の1つでもある、炭火焼き。
柔らかな牛フィレ肉と、旬の蝦夷鹿ロース肉、自家製サルシッチャ(腸詰/ソーセージ)の盛合わせ。付け合わせの野菜は、イタリア原産の野菜、「ラディッキオ タルディーボ」。 ラディッキオはチコリの仲間で、赤紫と白の色鮮やかなコントラストが特徴。イタリア北部のヴェネト州で多く生産され、秋から冬にかけて旬をむかえるイタリアの冬野菜の代表です。
サラダで頂くと、ほろ苦い味わいですが、付け合わせでは、ソテーして供します。ソテーすることで、野菜の甘味が溢れます。
メインのお肉が1種類であれば、その肉質でもっと限定的な味わいのワインもセレクトできますが、フィレ肉の柔らかくジューシーな味わいや、鹿肉の赤身のしっかりとした鉄分の味わい、サルシッチャのスパイスや色々な部位の複雑な味わいが特徴です。
この様々な味わいを上手に纏められるワインが、
カンノナウ ディ サルディーニャ ”コロナマイヨーレ” テヌータ ソレッタ / サルディーニャ州
です。
一言で言うと、非常にバランスが取れています。
程よい濃さとスパイシー、タンニン。樽からくる角の丸い渋味と甘味。
炭火の香りや、肉汁の力強さ、濃い赤身の鉄っぽさ、サルシッチャのスパイスのどれにも上手く、旨く、美味く合います。
~ Dolce / ドルチェ ~
◆ イタリアのクリスマスロールケーキ
Tronco di Natale
フランスの“ビッシュ ド ノエル”にイメージとしては近いかもしれません。
チョコのスポンジと、チョコレートで表面を覆い、樹の表面を模しています。 中のクリームはモンブランのクリーム、いわゆるマロンのクリームです。周りに赤いフルーツを配し、粉糖で雪を降らせます。栗クリームや、チョコレートが甘く仕上がっていますので、添えるジェラートは、さっぱりと“瀬戸内のレモン”で作ったシャーベット。
クリスマスに、折角のコルソー(コース料理)を堪能して頂いたので、至福の延長線に甘美な時間を堪能して頂きたく、グラッパや、レモンチェロも良いですが、チョコやマロンクリームとも相性の良いヴィーノ ドルチェ(デザートワイン)をお楽しみただきたい。
以前のモンブランのミルフイユとのマリアージュブログでもご紹介した、
イゾラ ディ ヌラーギ “エルメス” パッシート / テヌータ ソレッタ / サルディニア島
甘美な味わいは、濃厚な栗のペースト、クリームと溶け合い、より深みを誘ってくれます。
皆さまも、素敵なクリスマスディナーをお楽しみくださいませ。
Buon Natale !