思い出のマリアージュ 上海ガニ @中国料理 礼華
2023/11/8
秋も深まりを見せる頃、思い出すマリアージュがいくつかあります。
今はイタリア料理のお店にてワインをサーヴしていますが、以前は長い間ワインを多く取り扱う中国料理店の礼華グループでソムリエをしていました。
在籍当時、夏が終わると、「中秋節」「上海蟹シーズン」「重陽節」「忘年会シーズン」「おせち料理」とイベントが盛りだくさん。
中でも上海蟹が入荷する頃には、各店舗のソムリエが上海蟹とワインのペアリングをプレゼンし合いました。
今でもベストマリアージュだったであろうと感じるペアリングがあります。
1)酔蟹(スイシェ)× シェリー アモンティリャード
上海蟹の紹興酒漬けです。
入荷したてのメスの上海蟹を、生きたままウォッカで軽く洗い、紹興酒とフルーツや調味料でつくった漬け汁で1週間ほど漬けます。
メスの卵とミソが程よく漬かり、トロリとしコワク酒の風味と甘味
蟹の足をつまんで、チューチューと吸い込めば、色気ムンムン!口いっぱいに蠱惑的な味わいが広がります。
チューチューした酔蟹が口の中を支配したあたりで、シェリー アモンティリャードを口に流し込むと熟成したヘーゼルナッツやアーモンドの深みのある味わいが、紹興酒漬けをした上海蟹と相まって美しいマリアージュを奏で、食欲がマシマシになります。
何故ここまで相性が良いのか!? 実はこのアモンティリャードは、非常に紹興酒に似ているのです!
一昔前は、シェリーは食前酒の代表選手でした。程よいアルコールが食欲を増進させてくれます。
そのようなことで、アミューズとして最初の一品として提供されるこの料理と合わせるワインとしては理想的でもあります。
2) メス 上海蟹の姿蒸し × アルザス ピノ ブラン(ヒューゲル)
以前在籍していた「中国料理 礼華 グループ」では蒸した上海蟹には「黒酢ダレ」と「ショウガ入り三杯酢」2種類のお酢を添えて提供していました。
ペアリングに提案したのは、アルザスのピノ ブランでした。
赤みがかったオレンジ色が美しい、ホクホクのメス蟹の卵を黒酢ダレに付けて召し上がり、黒酢と卵の甘味を感じたら直ぐにピノ ブランを流し込みます。すると、甘味がと深みが一層強くなりより美味しくなります!
蟹はどちらのタレで食べても美味しいですが、マリアージュを考えると黒酢でお召し上がるのがポイントとなります。
3)オス 上海蟹の姿蒸し × レトワール サヴァニャン ピリップ ヴァンデル / ジュラ
蒸したオス蟹は何といってもトロリと濃厚な白子が絶品です。
上海蟹の白子は、ものすごい濃厚なので、ちょっとずつ ちょっとずつ食べるのがポイント。
お好みでタレに付けて、ねっとりとした食感を味わっているあいだに、レトワール ”サヴァニャン”を含んでいただくと、まるで紹興酒を合わせたようなコクが生まれます。
このワインは、単体で飲むと個性が強くあまりワインを飲みなれていないと、難しいかもしれませんが、このクセにはまると、離れられなくなりますwww
この地方の、サヴァニャンの品種でのワインは”ヴァン ジョーヌ”をはじめ多くの生産者が造っていますが、色々と試した中ではピリップ ヴァンデルの造る ”レトワール サヴァニャン” が一番でした。
酸化熟成しているところからシェリーのような風味を感じ、ナッツや藁のようなニュアンスが強く感じます。非常にアロマティックです。これが、 ”紹興酒” のようなニュアンスにつながります。
紹興酒は後味にキャラメルの焦げ感のような独特の甘味が残ります。このワインはその辺りがなく、「スッキリとした紹興酒」のような印象があります。
この感じが、ねっとりとした上海蟹の白子と、キレのある紹興酒の雰囲気を持つサヴァニャンが互いに惹かれ合い、ますます美味しくなります♪
思い出のマリアージュ。
思い出すだけで、もぉ お腹が鳴ってしまいますwww
素晴らしいマリアージュに出逢わせて頂いた「礼華グループ」には今でも本当に感謝しています。