海老の紹興酒漬け × シャルル ド カザノーヴ ブリュット / ランス シャンパーニュ
2025.11~12 カウンター限定スペシャリティコースより1品目

NV Champagne Charles de Cazanove Brut
~ 紹興酒蝦 ~
Shrimps marinated in Shaoxing wine and soy sauce with a hint of chili.
フレッシュな牡丹海老を紹興酒と醤油でじっくりと漬け込み、ほんのり唐辛子を効かせた一皿。プリッと弾む海老の身に、熟成香漂う紹興酒の旨味と塩味が染み渡り、噛むほどに深いコクとほのかな辛味が広がります。火を入れないことで海老本来の甘味が際立ち、唐辛子の刺激が後味を引き締める。旨味・甘味・辛味・塩味の輪郭が共存する、まさに「五味のマリアージュ」を体現する前菜です。
この静と動を併せ持つ料理に寄り添うのは、シャンパーニュ「シャルル ド カザノーヴ ブリュット」。1735年創業、老舗メゾンの伝統が息づく一本で、果実味と酸の均整、そして熟成由来のブリオッシュ香が特徴です。立ち上がる細かな泡は、海老の食感を軽やかに引き立て、唐辛子の辛味を穏やかに中和。辛味によって一瞬高ぶった味覚を、泡の清涼感がすっと鎮め、再び穏やかな旨味へと導きます。これこそ、味覚における「中和と再調律」の妙。
また、ワインの柑橘系の香りと海老のほのかな甘味が同調し、口中で織りなす香りの層が美しい。酸味は紹興酒のまろやかな旨味を際立たせ、泡のミネラルが醤油の塩味に透明感を与える。対比ではなく、響き合う——まさに「同調のペアリング」と呼ぶにふさわしい関係です。
口に含むごとに、海老のミネラルとワインの酸が呼応し、次第に唐辛子の辛味が甘味に転じていく。その瞬間、味覚がひとつの頂点で融け合うような感覚が訪れます。シャンパーニュの繊細な泡が舌の上でリズムを刻み、アペリティフとしての軽快さを保ちながらも、紹興酒の余韻を受け止めて深みに変える。
まるで東洋の熟成香と西洋の泡が、静かな会話を交わすようなひと皿。
“辛味と酸味の中に生まれる甘味”という味覚の変化を、五感で楽しませてくれる導入として完璧です。
新しいコースの幕開けにふさわしい、繊細かつ華やかな第一章となるでしょう。
ソムリエ 吉岡 喜代志
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